東京都の気候を(これは日本の気候と同じであるが)支配する因子としては、冬季発達する大陸高気圧と、夏季優勢になる北太平洋高気圧の二つである。気候はこの二大高気圧の伸張盛衰がかもしだす現象であって、春秋はこの二大勢力の転換期にあたる。すなわち冬季は大陸高気圧のため北西から西の季節風がはげしく吹き、寒冷であるが、中央山脈のため、都の主部では快晴が続き、空気は乾燥する。島部では付近を流れる黒潮の影響を受けて、寒冷が和らぎ、気温はさほど低下しない。天気は南に行くにしたがって、曇雨が多く、風速も四季を通じて最も強い。春季は大陸高気圧がしだいに衰退し、移動性高気圧となって日本付近を通過するので、天気変化も規則だってきて、雨は量を増し、風速は一時的に強まっても、長続きしなくなる。気温は三寒四温の変化を繰り返し、徐々に上昇する。晩春から初夏にかけて、北太平洋高気圧が北上してくる。一方オホーツク海付近に、根を張る高気圧も優勢となるので、この気圧の間に挟まれた前線帯は、梅雨前線と呼ばれ、この前線の北部では北東の風となり、空気が冷涼であり、南部では南寄りの風が温暖多湿であるが、天気はいずれも陰曇となりいわゆる梅雨となる。
この梅雨前線は、通常六月上旬から七月上旬にかけて、ほぼ一か月本州南方洋上に停滞するが、七月中旬にはこの前線も、日本列島の北に上って梅雨は明け、東京都は北太平洋高気圧の圏内にはいり、南西の季節風期となり、盛夏となる。この際は晴天が続き天気は安定するが、都の主部は気温が上昇し、このため関東地方内陸部に発生する雷雨に見舞われることが多い。
晩夏から初秋にかけて北太平洋高気圧が、漸次衰退する一方、大陸高気圧が移動してくるので、この両気圧に挟まれた前線帯は停滞し、あたかも梅雨と同様の状態になることがある。これを秋霖(しうりん)とよんでいる。なおこのころ、北太平洋南方域に発生した台風は、本邦付近を通過するので、都は暴風雨に見舞われることが多く、島部付近はうねりが高まり、降水も増加する。
台風期が過ぎれば、大陸高気圧も漸次発達し、空気は清澄の度を増し、天気も規則だって周期的になり、気温はしだいに低下して、季節風による風速も強まってきて、徐々に冬に移行する。