土師器は酸化炎で焼いた赤褐色の素焼の土器で、手づくりのものがおうおうにしてあり、器形はみな単純である。その製作技術については、弥生式土器の系統をうけたものと認められる。伊興の狭間からは盤(さら)、坏(つき)、高坏(たかつき)、盌(まり)、坩(つぼ)、甕(かめ)、𤭯(はそう)、甑(こしき)、器台(きだい)などが出土している。
焼成は各形式ごとに相違しており、色調は灰褐色から赤褐色および黒褐色までの幾つかの階程に属し、中には赤色顔料を塗布したのもあって、器面にはへら様のもので磨かれたものと、そうでないものとがある。
盤(さら)は最も浅い平たい器であるが、盤よりも深い器を坏(つき)といって椀形をしており、これらは飲酒の器であるとともに、食物を盛る器にも使用されたもので大きさは一定しない。狭間から多く出土している。
高坏(たかつき)は坏に脚がついたものをいい、脚の低いものはともかく、脚の高いものは菜を盛る器であろう。
盌(まり)は坏より底部が深く円味を帯びたもので、大きさも種々あるが、狭間からは、角形の取っ手をつけたものも少数出土している。
坩(つぼ)は盌よりもいっそう底が深く、口部がくくれたもので、伊興の諸遺跡からは盤、高坏とともに最も多く出土している。
甕(かめ)は坩の大型品をいい、ともに飲料を入れる器で、高さ五九センチ、口径二一・五センチ、頸径部一一センチ、最大腹径三六センチ、厚さ一・八センチもある大型のものが狭間から出土している。
𤭯(はそう)は坩の腹部に孔(あな)が一つあるもので、この孔に竹管をさし込み、酒や水をそそいだものとみられる。
甑(こしき)は土器の底部に孔があるもので、穀類を炊く際、釜の中に水を入れて煮沸し、その蒸気で甑の中のものを蒸すときに使うもので、狭間から比較的多く出土している。