五 町村の高札

331 ~ 337

 前述のような諸禁制を、一般に知らせる制度として、町村の高札がある。各支配の役所からの達しは、各名主宅の門前や、村内の十字路などの札懸場所に掲げられた。当時の遺物は本区内にも何枚か残っているが、たいていは明治の初年(明治六年五月五日付東京府知事大久保一翁より、高札取除候旨再度布達)に散失してしまったようである。高札には次のような条項が記(し)るされてあった

 高札

   定

一 親子兄弟夫婦を始め諸親類えしたしく下人等に至る迄これをあはれむべし

  主人ある輩はおの/\其奉公に精を出すべき事

一 家業を専にし懈(おこた)る事なく万其分限に過べからざる事

一 いつはりをなし又は無理をいひ惣じて人の害になるべき事をすべからざる事

一 博奕の類一切に禁制之事

一 喧嘩口論をつつしみ若其事ある時みだりに出合べからず、手負たるものかくし置べからざる事

一 鉄砲猥(みだり)に打べからず、若違犯のものあらば申出べし

  隠し置他所よりあらはるゝにおゐては其罪重かるべき事

一 盗賊悪党の類あらば申出べし急度御褒美下さるべき事

一 死罪に行はるゝものある時馳集るべからざる事

一 人売買かたく停止す、但し譜代に召置事は相対にまかすべき事

 附

譜代の下人又は其所に往来る輩他所へ罷越妻子をももち有付候もの呼返すべからず、但し罪科のあるものは制外の事

 右条々可相守之、若於相背者可被行罪科もの也

  正徳元年五月 日              奉行

   定

一 きりしたん宗門は累年御制禁たり、自然不審成もの有之ば、申出べし、御褒美として

  ばてれんの訴人   銀五百枚

  いるまんの訴人   銀三百枚

  立かへり者の訴人  同断

  同宿幷宗門の訴人  銀百枚

 右之通下さるべし、たとひ同宿宗門の内たりといふとも、申出る品により銀五百枚下さるべし、隠置他所よりあらはるゝにおゐては其所之名主幷五人組迄一類共に可被行罪科者也

  正徳元年五月                奉行

   定

一 火を付る者をしらば早々申出べし、若かくし置におゐては其罪重かるべし、たとひ同類たりといふとも申出るにおゐては其罪をゆるされ急度御褒美下さるべき事

一 火を付る者を見付ばこれを捕へ早々申出べし、見のがしにすべからざる事

一 あやしきものあらば、せんさくをとげて早々御代官地頭へ召連来るべき事

一 火事の節鎗長刀刀脇さし等ぬき身にすべからざる事

一 火事場其外いづれの所にても金銀諸色ひろひとらば、御代官地頭へ持参すべし、若隠置あらはるるにおゐては其罪重かるべし、たとひ同類たりといふとも申出る輩は其罪をゆるされ御褒美下さるべき事

 右条々可相守之若於相背者可被行罪科もの也

  正徳元年五月 日               奉行

   定

一 毒薬幷似せ薬種売買の事禁す、若違犯のものあらば其罪重かるべし、たとへ同類といふとも申出におゐては其罪をゆるし急度御ほうび下さるべき事

一 似せ金銀売買一切停止す、若似せ金銀あらば金座銀座江遣し相改べし、はづしの金銀も是又金座銀座へ遣し相改べき事

附 惣じて似せ物すべからざる事

一 寛永の新銭金子壱両に四貫文壱分には壱貫文たるべし、御料私領共に年貢収納等も御定のごとくたるべき事

一 新銭の事銭座の外一切鋳出すべからざる事

一 所作の慥ならざる書物商売すべからざる事

一 諸職人いひ合せ作料年間賃等高直にすべからず、諸商売物或は一所に買置しめうりし或はいひ合て高直にすべからざる事

一 何事によらず誓約となし徒党をむすぶべからざる事

右条々可相守之、若於相背者可被行罪科者也

  正徳元年五月 日               奉行

   定

一 駄賃幷人足荷物の次第

  御伝馬幷駄賃の荷物壱駄重サ四拾貫目

  歩もちの荷物壱人   重サ 五貫目

  長持壱丁       重サ三拾貫目

但人足壱人持重サ五貫目の積り三拾貫目の荷物は六人して持べし、それより軽き荷物は貫目にしたがひて人数減すべし、此外いづれの荷物もこれに准すべし

  乗物壱丁    次人足 六人

  山乗物壱丁   次人足 四人

一 御朱印伝馬人足之数御書付の外に多く出すべからざる事

一 道中次人足次馬の数たとひ国持大名たりといふとも其家中共に東海道は一日に五拾人五拾疋に過べからず、此外の伝馬道は弐拾五人弐拾五疋に限べし、但江戸京大坂の外道中におゐて人馬ともに追通すべからざる事

一 御伝馬駄賃の荷物は其町の馬残さず出すべし、若駄賃馬おほく入時は在々所々よりやとひたとひ風雨の節といふ共荷物遅々なき様に相はからふべき事

一 人馬之賃御定之外増銭を取におゐては牢舎せしめ、其町の問屋年寄は過料として鳥目五貫文と人馬役は家壱軒より百文宛出すべき事

 附

往還の輩理不尽の儀を申かけ又は往還の者に対し非分の事あるべからざる事

右条々可相守之、若於相背は可為曲事者也

  正徳元年五月                 奉行

   定

在々にて若鉄砲打候もの有之候はゞ申出べし、幷御留場之内にて鳥を取申もの捕候を見出候はゞ早々申出べし、急度御褒美可被下置者也享保六年二月

   定

鷹番之儀、自今相止申候、然上は村中之者共弥(いよいよ)常々無油断、心をつけ、うたがはしき者有之ば、急度可相改之、若此以後鳥を取候もの有之時、不相改候はゞ、其村村之名主はいふにおよばず村中之者共まで越度たるべし其上又々鷹番可申付者也

享保六年七月

   定

一 人たるもの五倫の道を正しくすべき事

一 鰥寡(かんか)孤独癈疾(はいしつ)のものを憫むべき事

一 人を殺し家を焼き財を盗む等の悪業あるまじく事

   慶應四年三月               太政官

     千住宿高札(表書)

       覚

徳川慶喜恭順の実効を表するにより祖崇の功労被思召家名相続被仰出城地禄高等の儀も追々御沙汰に相成り末々の者に至るまで各其所を得ざる者無之様被度との思食に被為在候処豈図んや〓(簱)下末々心得違の輩至仁之御趣意拝戴し奉らざるのみならず主人慶喜の素志に戻り謹慎中の身を以恣に脱走に及び所々屯集官軍に相抗し無辜の民財を掠奪兇暴至らざる所なく万民塗炭の苦陥らんとす故に今般不得止之を誅伐せしむ素より其害を除き天下を泰山の安きに置億兆の民をして早く安堵の思ひをなさしめん為なれば猥に離散する事有べからず篤く御趣意を体認し奉り末々の者に至るまで聊心得違無之屹度安堵致し各正業を営み其分に安んすべき者也

  慶應四年辰五月             大総督府参謀

裏書

 此ノ書ハ明治維新ノ砌西郷、勝ノ両公会見シ江戸城開城ノ約ナルニ及ヒ勝公ノ揮毫セシモノナリト