祈禱獅子の起こり 全国的に行なわれている獅子舞、または獅子踊りといわれているものの一種であるが、獅子には外国渡来のものと、日本古来のものとがあり、大鷲神社で行なわれているものはその後者である。伝説によると、時代は明らかでないが、大洪水のおり六月村から流れついたのが、この獅子頭三つであるという。徳川時代中期以後、しだいに大鷲神社の酉の日に参詣する人が多くなり、祭事にこれを指導し、舞う人が養成されたので、雨乞いや疫病祓(えきびょうはら)いの行事として盛んに行なわれるようになった。悪魔払いの時につける大獅子の角に「天下一江戸の角兵衛」と作者の名前が刻まれている。
獅子の種類と花笠 いずれも一頭一人の個人獅子で、雄獅子二匹に雌獅子一匹で構成され、雄獅子には大獅子と中獅子がある。大獅子の角は四角柱で先の方がねじれ、中獅子の角は全部ねじれている。雌獅子はカカジシとよび、角がない。これらの獅子の地色は全部黒色である。獅子の胴は黒の木綿で、背には頭髪になぞらえた山鳥の羽根(黒色)が長く尻のあたりまでたれさがっている。
獅子舞のさい四方に置かれる花笠は、四本柱または四方柱とよび、花二笠と日月各一笠ずつある。花笠は中央上部に牡丹(ぼたん)の花三個をつける。日笠は金色のまるい太陽を形作る光円状で、月笠は銀色の三日月状のものにすすきを添えてつけるのが正常である。笠の周囲は緋縮緬(ひちりめん)の布を六〇センチほどたれ、その外側に花糸(藤)をたれる。直径はいずれも六〇センチほどのすげ笠を用いる。縁起によると、この笠は毎年新しいものを用い、一回使用した笠、花糸などを自家に持ち帰れば、幸福がくると伝えられている。
舞人の服装 獅子を冠る人は二十台の若い青年で、上衣はそろいのゆかたを用い縞袴(しまばかま)をはき白い手甲(てこう)をつける。日本古来の一人立獅子は、多く筒袖に裁附袴(たつつけはかま)(伊賀袴)を用い、手甲、脚絆(きゃはん)、足袋(たび)(白または黒)草鞋(わらじ)をつけるが、この獅子は服装が簡略化されている。
胸に太鼓をつけ、両手に小さいばちを持って、舞いつつ打ち鳴らす。これに反し、小右衛門稲荷、あるいは島根鷲神社などで行なわれる獅子舞は外来獅子の方で、頭髪は羽毛を用いず、口、耳が動き、二人で舞い、這(は)ってもいいように服装もシャツ、股引(ももひ)き、足袋(たび)という略式を用いている。花笠をかぶる者は中学生程度の女子で、服装に限定はない。
獅子舞の時期と場所 大鷲神社の獅子舞は、毎年の悪魔払いおよび祭札時と、十一月の酉の日に行われる。雨乞いのときにも行なわれたというが、むかしのことでいまはない。
場所は鷲神社本殿西側の広場を使うのがつねで、神社側に幣子(へいし)を立てて正面とし、獅子は社に向って奉舞する。
一人獅子の持つ太鼓は
大獅子 大きく、低い音の太鼓
中獅子 中くらいのもので高い音の太鼓
かか獅子 小さく低い音の太鼓
でいずれも同じようにたたきながら舞う。
舞の種類と舞の概要 舞には岡崎、火掛り、綱渡り、橋渡り、口掛け(二種)、花がくしなど六種類がある。
①岡崎の舞 かか獅子は「岡崎城主はよい城主」の調子笛で中央を回り、中獅子および大獅子は神前(幣前)に進み、天下泰平五穀豊饒(ごこくほうじょう)の字を頭で書くように舞いながら「さらば」の笛曲で全員退場する。いわば儀礼的、象徴的な獅子舞である。
②火掛り 舞の筋は、三匹の獅子が野原を行くと、幣(ぬき)と弓が立ててあるのに気付き、恐る恐る幣を戴いてお祓いをするというものである。
笛の音は低調で祈念を意味している。
③綱渡り 張り渡された綱をゆすぶって大あばれにあばれながら、下におして渡るもので太鼓は強く高く、テンポの早い笛の曲とともにその状況を表現する。
④橋渡り 綱渡りと同じような手段で橋を渡るという天下泰平の象徴舞の一つである。綱を橋に置きかえて変化をみせたのに過ぎない。橋は幅約一・八メートル、長さ一・二メートルの檜造り欄干付きで本格構造の物を用いる。
⑤口掛け 時間は十分あまり、最小時間の舞で、笛と舞を主に同一動作をして、外向きまたは内向きに円形陣をつくって舞う。
⑥花がくし 三匹の獅子が花見にきて、母とはぐれてしまったので、早く見つけた方が母とともにいることを約して探しまわるという筋である。