六ツ木町から南へ、佐野町・大谷田町・中川五丁目・同三丁目・同二丁目・同一丁目と七か町にわたる中川右岸の堤に桜並木がある。この堤の桜は足立区の名所であるばかりでなく、観光案内、鉄道案内はいうに及ばず、百科事典にも、飛鳥山、上野公園、江戸川堤、小金井堤などと肩を並べ、桜の名所と記録されている。
明治三十五年(一九〇二)四月、ときの東淵江村長金子峯助氏の発案で、青年団、農会、在郷軍人会、消防団体協力のもとに植樹されたもので、はじめ八重桜が川沿いの片側に植えられたが失敗に終り、その後再び染井吉野桜を両側に植えた。堤に植えられた稚木は、各家々で苗木を二年、三年と育てあげ、つぎつぎと増植していったものである。また、青年団員が幕を張って、花守に当ったという美しい話も残っている。
第二次世界大戦から敗戦後にかけて、盗伐されたり、戦後発生した害虫アメリカシロヒトリの被害にあったりしたが、地元中川堤桜保存会(会長岡田新右衛門氏)や区の農産係・公園係などの努力によって、保護育成につとめ、毎年春には盛大な中川堤桜まつりを開催してきた。しかし、樹令六十年の老木となって、枯死するのが増加し、また、建設省から新しく植樹することを禁じられ、ことに最近は自動車の交通はげしく、その排気ガスのため、ほとんど枯れてしまった。