映画″煙突の見える場所〟で一躍全国にその名をひろめた東京電力千住火力発電所(千住桜木町三五にあった)の四本煙突は、高さ八三・八メートル、直径四・五メートルという大きなもので、対角線の長さが一方は六四・二メートル、片方が一〇・五メートルと極端におしつぶした菱形に配置されていたため、見る場所によって一本にも二本にも、さらには三本にもみえるところから、誰れいうとなく「お化け煙突」と呼ばれるようになり、長い間下町の人に親しまれてきた。
大正十五年一月、いまの東電、そのころの東京電灯会社が、米国から機械を買入れ発電をはじめるとき、当時の金額で千五百万円をかけ、ボイラー用の煙突として建てたもので、七万五千キロワットの発電量をもつ、日本最大の火力発電所の象徴でもあった。
当時の最新型発電所も時の流れとともに、最近ではすっかり時代遅れのものとなり、人手がかかり、熱効率の悪いボイラーが廃止されることになって、無用の長物化した煙突は、昭和三十九年十一月末に、その姿を下町の空から消してしまった。
このなつかしい煙突の面影を少しでも残しておきたいと、区立元宿小学校では、煙突の残がいの一部をもらい受け、半円形のスベリ台を作った。一部とはいえ、直径六メートル、幅一・三メートル、重さ三トン。いかに大きな煙突だったか、今はむかしの物語として、長く語り伝えられることであろう。