境界領域の二重性

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こうした千住地区の位置は、見方を変えると、江戸時代の江戸と関東農村の二つの性格、宿場も江戸四宿でありつつ日光道中の初宿であったこと、近現代において東京の郡部でありつつ東京という都市の一部となったことなど、都市と農村の境界領域に位置する地区であると言える。こうした二重性は千住地区の歴史や文化に通底する性格であった。多様な、そして一見混沌として見える歴史過程とその文化は、こうした二重性を踏まえずには理解しがたい。しかし、この多様性こそが、千住地区の風土と言うことが出来よう。

 本書は、こうした歴史的性格を踏まえて構成している。そこで歴史過程と密接不可分の関係にある宿場地区の部分では、千住地区全体の通史を述べるとともに、個々の文化財等について取り上げた。また西部地区および東部地区では、それぞれの地区に関する重要な事項を取り上げるとともに、千住地区の宿場では捉えきれない多様な歴史過程に考察を加えている。

 最後に、こうした地区区分や研究課題を含め、本書は問題提起的な部分も多い。よって今後の郷土史の発展を期待しつつ、読者諸賢による本書の活用と批判を願ってやまない。