江戸から見た千住の産物

57 ~ 58

江戸と周辺の産物を書き上げた「武江産物志」という資料がある※。江戸の本草学を修めた幕臣岩崎常正が一八二四(文政七)年に著したもので、江戸から見た産物の供給地が記されている。

※ 東京都公文書館蔵。野村圭祐『江戸の自然誌―武江産物志を読む―』(どうぶつ社、二〇〇二年刊行)がある。

 本資料によって江戸から見た千住宿の産物を一覧したのが上のである。一般的な産物、例えば米などについては産地が記されていないため、著名な事例のみ(特産物)となる限界はあるものの、江戸からみて千住の特産品が見出せる点が興味深い。

『武江産物志』に見える千住の物産
No. 分類 産物名 備考
1 野菜并果類 豌豆(えんどう)、水菜(けうな)、水芹(せり)、ミつば芹(みつばせり)、紫蘇(しそ)、同蒿(しゅんぎく)、蓼(たで)、藕(はすのね)、慈姑(くわい)
2 薬草類 水澤瀉(さじおもだか)、ウリカハ、破銅銭(たのじも)、蘿蓆(ががいも)
3 河魚類 鰻鱺魚(うなぎ)※1、鰌魚(どじょう)、鮧魚(なまず)※2、鯽魚(ふな)※3草蝦(てながえび) ※1「夏の中よし」とある。
※2「五月より九月ごろまで」とあり
※3 千住と綾瀬が並記
4 介類(貝類) 田螺(たにし)
5 水鳥類 鶴(つる)、紅鶴(とき)、雁(がん)、鴨(かも)※ ※「まがも、あおくび、あいさ」の各種が記載
6 山鳥類 伯労(もず)、あかはら、鶫(つぐみ)、むしくい、啄木鳥(きつつき)、山鵲(さんくわうてう)、ほうじろ

※出典=1824 (文政7)年成立、岩崎常正「武江産物志」(東京都公文書館蔵)による。
※表記および読みは出典による。

 ここで掲げられた特産物としては、野菜并果類や薬草類にはじまり水鳥や山鳥などの鳥類に及ぶ。品川のような海魚や海苔、台地上の蕎麦や大根と異なり川魚や青物が中心となっている千住の特産品が並んでいるが、その種類は実に多岐にわたる。なお、ここに記された特産品は千住で生産したものというより千住で取り引きされ江戸の人々が入手した産物と言えよう。