浮世絵「武州千住」

65 ~ 65

葛飾北斎の著名な作品群として知られる「冨嶽三十六景」の一つに「武州千住」がある。浮世絵には名所であった千住大橋が数多く取り上げられているが、千住自体を題材とした浮世絵は少なく、本図と「関屋の里」が知られるのみである(「関屋の里」については「常東地区」参照)。

 絵は、ネギを背負った馬と人が千住から富士を眺めている構図である。さらに手前に釣り人が描かれ、水路の堰枠様の構造物が描かれている。隅田川と推定できる水路が絵の中央に確認でき、その上部(背後)に富士が配置されている。画題となった場所であるが、これらの条件を満たす場所は、おおむね千住の西部地区の隅田川沿岸と考えられ、堰枠は元宿堰と推定できる(ただし断定はできない)。

 前栽の中でも著名なネギを運送する人が描かれていることを踏まえると、千住市場へ出荷する近在の百姓衆とするのが妥当な解釈であり、いわば千住の生業を画題として捉えた作品であると評価できる。


葛飾北斎 冨嶽三十六景「武州千住」(足立区立郷土博物館蔵)