橋戸稲荷神社本殿

202 ~ 203

幅二六〇cm、奥行き二三〇cm、本瓦葺、寄棟造(よせむねづくり)、平入りの土蔵造りである。現在は風雨から守るための屋根と囲いが取りつけられている。内部から発見された棟札に「安政六年(一八五九年)巳未歳九月吉祥日」と書かれている。その後の修理については「棟札」によると、一九六八(昭和四三)年九月に「奥段扉並拝殿屋根漆喰修理」と書かれ、次いで一九七五(昭和五〇)年一〇月から一一月にかけて、「奥殿並拝殿屋根総漆喰修理」と書いた棟札がある。さらに、一九九八(平成一〇)年七月から八月にかけて修理が行われた。

 本殿正面の扉は観音開きで、内側には鏝絵(こてえ)の名工入江長八(いりえちょうはち)の作品が残っている。『伊豆長八作品集 (上巻)』によれば一八六三(文久三)年、四九歳の時の作品という。左側に母狐と二匹の子狐、右側に父狐が描かれている。神前にぬかずき目を上げれば、母狐の慈愛と父狐の威厳の眼差しが注がれる。背景の豊かな実りの稲穂は、人びとの豊作の願いを映している。


橋戸稲荷神社本殿扉内側の鏝絵(足立区登録文化財)

 本殿は、一九八二(昭和五七)年一二月一〇日有形文化財(建造物)に登録され、長八の鏝絵も付記された。通常非公開であるが、二月三日・五月五日・九月一五日の祭礼には扉が開かれ参観する事ができる。なお、地元の有志の浄財により、レプリカが三基作成され、一基が境内に常時展示されている。その他の二基は、足立区立郷土博物館と伊豆松崎町の長八美術館にそれぞれ収蔵されている。