この建物はNTTの前身である逓信省千住郵便局電話分室として、一九二九(昭和四)年に建てられた。かつてここには前日の和田牧場が西新井へ移転した跡地である。総工費は約一八万円、当時逓信省の技師だった山田守が設計し、大倉土木によって施工された。
山田守(一八九四~一九六六)は、日本近代建築開拓者の一人と評価され、彼が属した分離派建築会は、型にはまった設計技法からの脱却を図って、一つの時代を築いたという(『建築大辞典』)。
山田は、戦前に東京中央郵便局、東京逓信病院を手がけた他、戦後には独立して建築事務所を開き、九段の日本武道館を設計した。
彼の作風は曲線を多く用いているが、このNTT足立支店にも曲線が多用されている。国道側正面角に向かって開いている出入り口部分は、ゆるやかなカーブを描いており、それがこの建物を印象づける上で大きな役割を果たしている。この丸みを帯びた設計は、窓枠、外灯、中庭に抜けるドーム型通路、玄関のひさし、丸窓などにも現れている。NTT足立支店は、二〇〇二(平成一四)年三月をもって閉鎖し、現在は、NTT東日本(東日本電信電話株式会社)東京支店の営業企画部がここを仕事場としている。この建物は、都市化していく千住の一時期を物語る歴史的建造物として重要である。そしてNTT東日本によって、現在も大切に使用され、現役を続けている。