十一面観世音(千住曙町・京成線土手)

315 ~ 315

 東武線牛田駅近くの低いガードの際、広くなった道路に面した京成線の土手下に、十一面観世音菩薩石像が祀られている。

 もとは、隅田川沿いの千住曙町三九番地付近、汐入の渡し場に入る所(三〇一頁写真参照)にあったものだという。確かな由来は不詳だが、一九六二(昭和三七)年八月一八日に移動されてきたことを伝える石碑がある。この石碑には「十一面観世音堂建立奉賛会」として、発起人(個人一三名と千住自動車教習所)と有志(二三名)、世話人(三名、重複)の名前が刻まれている。現在の観音堂が建立されたのは、隅田川縁の防潮堤建設の時期にあたっている。その工事によって移転を余儀なくされたのかも知れない。

 お堂の脇に掲げられた手書きの額には、「昭和五一年八月吉日 観世音講結成」とあり、一〇〇人を越す人びとの名が記されている。このような講中としてはきわめて新しい組織である。けれど、この地の人びとにとっては、「心の拠り所」であると、三人の世話人の一人である市村二郎・なつさんは語る。この観音堂にはよくお参りをする人がやってくる。「足腰が弱ってきて、浅草までお参りに行くのも難儀だったが、近くに観音様が祀られてたいへんにありがたい」といった声を聞くと、掃除に出掛けるにも張り合いがでるという。

 十一面観世音石像がここに移ってきた日の八月一八日には、毎年一〇数人の人びとが集まり、西光院の住職が読経をあげ、供養祭を行っている。


東稲荷 踏切の安全を守るような場所にひっそりと建てられている(2003<平成15>年)


十一面観音堂


路傍の石仏 十一面観世音
(2003<平成15>年)