西新井の大師は、南郊の川崎大師と同じく厄除(やくよけ)流行仏である。男の二十五女の十九の厄の人達がとして参詣(さんけい)する。ここに行くには、本所浅草(ほんじょあさくさ)停車を起点とした東武鉄道によるのが一番便利である祭日には、東武鉄道では、臨時汽車を運転して、汽車賃を半減している。
その線の中に、西新井という小駅がある。北千住(きたせんじゅ)の次駅である。この小さな田間の停車場が時には人で埋まることがあるのであるから、以(もつ)ていかこの大師の流行仏であるかということが想像するとが出来る。そこから、田圃の中をぬけて僅(わず)かに七町の距離で、汽車の中からも、その大きな祠堂(しどう)の瓦甍(がぼう)を指(ゆびさ)すことが出来る。
(『東京近郊 一日の行楽』現代教養文庫、社会思想社、一九九一年〉に収録)。