古老聞書 花作り五十年

201 ~ 201

※ ここに紹介する鴨下金三氏の聞書は『足立史談』第九~一一号(一九六八年一一月~六九年一月)に掲載された記事である。本文中には現在の表記と異なる字句・文言も見受けられるが、ここでは資料としてそのまま掲載した。なお明らかな誤植については適宜補正した。

             語り手 鴨下金三

             聞き手 勝山準四郎

 足立区梅島二丁目三七の五鴨下金三(七八)さんは、区議会議員として区政にも参加され、今も区議待遇者であり区政界の長老である。しかしそれにもまして、大正初期から今日まで五十余年間本区花卉栽培の先達として数々の足跡を残されたことは著名である。

 特にチューリップの温室栽培については我国の草分けであり、それまで我国では不可能とされていた温室内での開花の成功は、本邦園芸史上その功績は高く評価されている。当時その体験談は農業専門誌に掲載されて全国的な反響をよび、道をたずねて訪れる者が多く応接にいとまがなかったとのことである。

 又家業としてはその外に鉄砲百合の栽培が有名であり、都内の生花市場では「鴨下の百合」の名は別格扱いをうけていたとのことである。

 今年の生存者秋の叙勲において、園芸功労の故をもって、勲六等瑞宝章授与の栄を賜わったのも、むべなりと言うべきであろう。

 今回はこの足立産業界の先覚者鴨下金三翁をおとずれ、苦心談の一端をうかがうことにした。(勝山準四郎)