平野には二か所に成田山の道標がある。一つは平野神社にあり(もとは庚申堂に所在)、もう一つは草庵伝承を持つ一角の路傍に立っている。銘文は、
東 成田山道 拾六里 (約六〇km)
西 弘法大師道 十五丁 (約一六〇〇m)
と正面に刻まれ、側面に造立者らしき名があるが、剥離・磨滅が激しく、これ以外は読み取れない。
道標に面している道は、旧成田道(大師道)である(成田道・大師道については二三八頁参照)。したがって、もともとこの路傍にあり、人びとの案内をしてきたものであるが、次のエピソードがある。
成田道には、これに沿って小右衛門堀という用水が流れていた。小右衛門堀を暗渠にする工事をしていた時(昭和四十年代)、誤ってこの道標を用水に落とし、紛失してしまった。後日、他の町の人が道標を発見し、自邸に保管しているとの話を聞き、今まで保管してくれたお礼をして返してもらうことになったという。
以来、町の人たちは、二度と紛失しないようにと、現在は下部をしっかり鉄枠で補強して、その保持に努めている。