これまでの出雲俳諧に関する主な著作・論文に以下のものがある。
・桑原視草『出雲俳句史』(昭和十二年九月、私家版。なお、昭和五三年四月に、だるま堂限定版として複刻された)
・桑原視草『出雲俳壇の人々』(昭和五十六年八月、だるま堂書店)
・松井立浪『俳人魚坊』(昭和二十五年九月、魚坊翁顕彰会)
・大礒義雄『岡崎日記と研究』(昭五十年十月、未刊国文資料刊行会)
・大礒義雄「高見本『岡崎日記』『元禄式』の出現と去来門人空阿・空阿門人百羅」(『連歌俳諧研究』87号、平成六年七月)
・復本一郎「蕉風伝書における「皮肉骨」についてのノート―『伝書古池之解』を紹介しつつ―」(神奈川大学『国際経営論集』1、平成二年三月)
なお、平成二十三年度以降の手錢家蔵書調査の成果として、稿者もこれまで以下の稿を発表した(現時点での刊行予定も含む)。
・「季硯句集『松葉日記』―手錢記念館所蔵俳諧資料(一)」(『山陰研究』6、平成二十五年十二月)
・「翻刻・手錢記念館所蔵俳諧伝書(一)―手錢記念館所蔵俳諧資料(二)」(『湘北紀要』35、平成二十六年三月)
・「百蘿追善集『あきのせみ』」―手錢記念館所蔵俳諧資料(三)」(『山陰研究』7、平成二十六年十二月)
・「翻刻・手錢記念館所蔵俳諧伝書(二)―手錢記念館所蔵俳諧資料(四)」(『湘北紀要』36、平成二十七年三月)
以上の先行研究のうち、『出雲俳句史』が通史として重要であるが、同書は、近代以前の出雲俳諧について、大変厳しい評価を下している。
明治以前の出雲俳壇は全国的地位から云へば甚だ低くかつたと云はなければならぬ即ちこれ等の俳人にして日本俳諧史上にその名を残すほどの者は一人もない。されば彼等が明治以後に輩出した出雲の俳人に対して何等英雄的先覚的存在とはならなかつたことは申すまでもないが有形無形に与へた好影響はこれを認めぬわけには行かない。
(『出雲俳句史』「第一編 明治以前 第一章 概説」)
ただし、当時、著者の桑原氏が参照できた資料には制約もあり、その内容に訂正を要する点もある。そのことも併せ、右の評価が妥当なものであるのか、以下で検討することとしたい。