はじめに

 「萬日記」、「婚礼一途」は、婚礼という特別な行事への今と変わらぬ思いが垣間見えるとともに、今は廃れてしまった様々な儀式や様式を知ることのできる、大変興味深い資料である。
 「萬日記」は手錢家当主が代々書き継いだ公私に亘る書き留めだが、婚礼に関しては、四代此三郎、六代白三郎(忠助)、七代白三郎(清太郎)、八代白三郎(安秀)についての記載が確認できる。
 また、五代官三郎(有秀)、六代、七代についてはそれぞれ、「婚礼一途」として書付けをまとめた包みが残っており、八代については、「婚礼一途」一帖が残っている。包みには、縁組みの経緯、式次第、室礼や器、献立、料理人やお酌といった手伝いの名簿、準備や段取りから細かい注意や覚え書き、トラブルまで記された萬留だけでなく、関係者とのやりとりや方々からの祝いの手紙、いただいた御祝いの品や返礼の目録など、婚礼に関わる記録が一括して入っている。