いなみ野台地の開発の歴史は、農家の人々にとっては‘水を求めた歴史’とも言える。それは日常生活や年中行事に表れていて、報告した鳥羽地区の「掘割祭」、松陰新田地区の「道覚まつり」、清水新田地区の「与次衛門の供養」などにみることができる。村の開発とそれに深く関わった人々の苦労や努力が背景にあるからこそ、今なお、それぞれの地域でしっかりと伝え受け継がれているのである。都市化が一段と進展する中で、同じ時期に歩みはじめた今回の3地区は、農業経営においては多少の差異がみられるようになったが、農業や水にまつわる年中行事は日々の生活に継承されている。
明石市内の地域においても、それぞれの地域を物語る歴史があり、これまで見過ごされてきた地域の文化を新しい観点から見直す作業を、今こそ、行っていくことの大切さを痛感している。
なお、今後もこの地区を含め調査を継続していく予定であり、ご協力とご支援をお願いしてまとめとする。