―籤(くじ)による漁場割り―

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込ませ網漁は、網船(あみぶね)に5~6人、手船(てぶね)(運搬船)に3~4人の合計8~10人1組で操業する。漁場に着くと、潮流と袋網が平行になるよう、両袖網が潮上に向かって開くように、両袖の端を100kgの片爪の錨(いかり)で沈める。袖網と袋網には網を浮かせるために、直径1mぐらいの大きな浮き樽を7~10個付けておく。網を投入した後は、潮の流れに乗った魚群が入るのを待つ。海面に浮かぶ樽の状態から、魚の入り具合を読み取り、手船が捕獲し、漁港に運ぶ。「船のデッキで将棋を差して待っておれば、イカナゴが勝手に入る」と漁師が「どうらく網」ともいう込ませ網漁の漁獲高の決め手は、漁場である。込ませ網漁は、主に地先の海で行われた。漁場は、漁期の初めに籤で決め、1日ごとに場所を替わる。東から西へ、1番.明石川沖 2番.望海浜沖 3番.林港の東 4番.林港の西 5番.(松江)ババヤの沖 6番.松江‥‥‥‥15番.八木の沖のカンタマの磯、というように250m間隔で15の枠がある。さらに1つの枠を田の字型に区分し、「上(かみ)ナラ」「上沖(かみおき)」「下(しも)ナラ」「下沖(しもおき)」と呼び分けて、4つの組がそれぞれに網を張る。「ナラ」は陸に近い方の灘のこと、沖は「オキラ」という。「上(かみ)」は東、「下(しも)」は西である。この枠内の場所も一日ごとに替わる。
 進み方は、1番→3番→5番と奇数番号の籤の者は、奇数漁場だけを進み、15番まで進むと、次に2番→4番→6番というふうに偶数場所を移動する。番外の場所は、自由に操業してもよい。潮時によって、鹿ノ瀬まで行くこともあるが、早いもの勝ちだった。「海底の崖が飛び出ているところ、1番・4番・7番・9番・11番の沖が良かった」「深いところの方が水温が高いし、潮も速い。潮の速い方がイカナゴがよく入るので、沖の方がよい」とか「その日によってわからん。イカナゴに聞いてくれ」という漁師もおり、毎日漁場を替わって平等性を保つ工夫をしていた。