タコ釣り

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 東二見村の文書「安永三義人傳」(安永7年1778)に、「林村の蛸猟法は、(中略)船一艘に釣り糸十筋ほど仕掛け、しずを付け、汐の差引に流し掛ける」とあるように、タコ釣りは林村の古くからの漁法である。1935年の統計では218隻が操業し、1959年度にはタコ壺漁とほぼ同じ漁獲高を上げ、林村のタコ漁の一翼を担っていた。タコ釣りに適した5月~7月ごろには、普段網漁をしている者もタコ釣りを行った。

漁具図「東二見のタコ釣り具」
『播州東二見浦漁業の歴史』より

 釣り具「タコデ」は自分で作る。舟型の板に錘石と鈎針二本をつけ、エサに見立てた彼岸花の球根を付ける。林村では、彼岸花のことをテクサリという。テクサリを普通3つ付けるが、水深100m余の深い漁場では、大型のタコデにテクサリを5、6個付けた。テクサリの代わりに、綿をタコの好む赤い布でくるんだり、やがて布の代わりに着色したビニールを使うようになった。この釣り具に糸をつなぐ。大型のタコデの長さは、20尋(30m)、中型は10~15尋(15~23m)ぐらいである。手漕ぎの船のころには三人で出漁し、一人が艫(とも)(船の後部)で櫓を操り、船をタコがついてくる速さで流す。一人が表(おもて)の間(ま)(船の前部)で、風による船の揺れを櫂で加減する。釣り師は胴(どう)の間(船の真ん中)に立って片手に5~6丁、両手で10~12丁のタコデを投じて海底を曳く。タコがエサに抱き付くと、糸の張り具合でわかるので引き揚げて捕獲する。漁場は地先の海や垂水~須磨あたりであった。

タコ釣り具「タコデ」