―巾着網の操業方法―

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 網船2隻(真(ま)網と逆(さか)網)にそれぞれ20~30人乗り込む。網船は八挺(ちょう)櫓の船(艫櫓(ともろ)2挺、左右の脇櫓(わきろ)3挺ずつ)で1挺の櫓を3人がかりで漕ぐ。4人乗りの手船3隻と3人乗りのヨケ(ヨキ)船が7、8隻(12、3隻の場合も)、総勢80~100人の大船団で操業する。
i.手船が「色見(いろみ)」(魚群を探す)をする。色を見るのは、遠目の利く熟練漁師の役目。イワシが固まって泳いで来たら、海の色が赤黒くなる。魚群を発見すると「マネキ」という大型の羽子板のような板で合図を送り、網 船を誘導しながら手船は漁場に急行する。他の網に先を越されないよう、手船の漕ぎ手には力のある若手が当たる。色見は、「カガミ」という円筒形の箱メガネで魚群を確認し、網を巻く場所を決め、網船に合図する。
ii.網船2隻が、上部に浮子(あば)、下部に沈子(いわ)をつけた長方形の網を円を描くように張って魚群を取り囲む。ヨケ船は浮子縄が沈まないよう吊上げている。網船は轆轤(ろくろ)を使って網を手繰り寄せて魚を捕獲し、網の下部を巾着のように絞って魚が逃げるのを防ぐ。
iii.網を引き終わると、ヨケ船は漁獲物を港に運搬する。大漁のときは「ウオーホン、ウオッソイ、イワシタ、イワシタ」と囃しながら、「タコのぼり」というタコの足のような吹き流しを艫に立てて帰港した。漁獲の分配は、水揚げの3割を網代とし、さらに油代などの経費を差し引いて、残りを全員で平等に分けた。20歳を超すと「大人」で「一人前」貰う。それまでは、7分か8分である。大漁のときは「オシコミ」といって、「オシコミ料」が貰える。

巾着網漁 林崎沖(昭和32年)
林コミュニティ・センター提供