「定宿帳」と浪花講(なにわこう)

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 適正な料金と良いサービスが受けられる宿屋を“講”(旅籠の組合)が認定し、その宿屋を街道別にまとめて周辺の名所案内とともに紹介したものが「定宿帳」で、大坂玉造の松屋甚四郎が講元となって「浪花組(のちに講)」を立ち上げ、旅人が宿泊の時に示す鑑札と併せて配った。認定された宿屋の軒先には講の名前入りの看板を下げて目印としていた。安心して泊まれる宿屋の情報が得られることから広く好評を博し、他に東組講・仲吉講・関東講などが生まれた。
 「定宿帳」に載る西新町の宿屋「山本善右衛門」は、明治36年に刊行された『明石舞子の古今誌』に“旅人宿 諸講組御定宿”として広告を掲載しており、講の定宿であることは宿屋にとって一種のステータスでありその伝統は長く引き継がれている。
『諸国定宿帳』表紙
浪花講看板(神戸市立博物館)
(左)『諸国定宿帳』表紙    
(右)浪花講看板(神戸市立博物館)

長池・大久保・明石の旅籠『諸国定宿帳』『明石舞子の古今誌』
長池・大久保・明石の旅籠『諸国定宿帳』『明石舞子の古今誌』

旅籠の玄関と講看板『東講商人鑑』
旅籠の玄関と講看板『東講商人鑑』