洋船構造を採用した艫の部分、これは上述した過酷な海域を乗り切り、獲れたての生きのいい魚をできるだけ早く確実に大阪に運ぶため、強力で頼れる発動機を搭載することとなったためであろう。そのような発動機は大きくて重い、当然それには船体にそれ相応の浮力を必要とする。
明石型が採用した洋船の巡洋艦型船尾であれば、和船のカウンタ船尾に比べ、水線が長くなり造波抵抗が減り馬力もすくなくてすむ。また、かじやプロペラの上に覆いかぶさってプロペラを保護すると同時にその推進効率が有利となる。加えて張り出し部の容積が増すので船室が広くとれ、浮力が増し、追い波にも強くなる。艫に洋船構造を採用したことが頷ける。
一方真横から見る水面上の艫の立ち上がる角度、それは垂直というより僅かにオモテ側に傾いでいる。その絶妙なる傾き加減がミヨシの傾斜角度とあいまってフネ全体をキリッと引き締めている。
また、艫の角を削って丸みをつけている。これも漁船のその部分が角ばっていることを思い起こすと、「洋」つまり「近代」を意識した丸みではなかろうかと思う。