まず目につくのが船橋のビーム・キャムバー(beamcamber)の妙である。ビームキャムバーとは、甲板の中心部が高く両舷に行くにしたがい低く傾斜する古い帆船時代からの船体構造である。船が傾いたとき、このキャムバーが大きければ、フネが傾いていても甲板の一部は水平になっているわけで傾きの激しい帆船時代に考え出されたものである。
明石型の船橋には5つの窓がある。中心の窓を軸として両舷各2枚の窓枠が絶妙な傾斜角度を持ち両舷側にながれている。また、各窓の縦軸がそのまま船橋の根本にまで伸び、上の窓枠のキャムバーと見事な平行線を描いている。
船橋は船を操縦する要であるから、フネの顔、あるいは頭というべきか。それで明石型の船大工は船橋に見栄えの良さを加えることに腐心したのであろう。柱、窓枠に上等な材を使い絶妙なキャムバーを描いたうえにペンキではなくニス仕上げとしている。