さらに数寄者を唸らせるものが、舳先にある恐らくケヤキ材であろう、高級な材に漆かニスを塗り、紋章、唐草文様、ときには船主の願いを込めたものか「一富士二鷹三茄子」など縁起物の文様までを深々と彫り込み金箔を埋め込む。船名板もまたしかり。金がかかっている。
これらが持つ意味は西洋におけるフィギヤーヘッドと相通ずるものがあろう。が、明石型のそれは船造りという概念をこえ播州地方の神輿・地車・屋台の装飾を想起させる。
とまれ明石型の船乗りの至上命令は獲った魚を生きたままぴちぴちした状態で消費者の口へ運ぶこと。魚の新鮮さと同様、彼らの‟気っ風、心意気のよさ”といったものがカタチとして具現化したものと考えてもよさそうだ。
生きた魚を運ぶ生船の船乗りと神輿を担ぐ男衆の‟気っ風、心意気”はどこか共通するものがあるように思える。