木栓及び換水口の構造

53 ~ 54 / 306ページ
 生船の特徴の一つとして、船底部または上棚舷側部の複数の穴から、船外の新鮮な海水を取り入れ、他の穴から生間の海水を排水する連続的な海水交流方法によって生間内の活魚に最も重要な酸素補給を行うことである。この機能を行う穴を海水が交換する穴「換水口=栓口」と呼ぶ。生簀と海水が出入りする換水口は長方形をしており、船底部と上棚舷側部に複数が開いている。現在残っている木栓(図5)の大きさは上面で縦8,9cm×横17,6cm、下面で縦7,5cm×横16cm、高さ10cmで下面に向って台形である。このことから換水口は約8cm×17cm程度の大きさであったと思われる。
 

図5 木栓実測図

木栓は槙の柾目を丁寧に面取り加工している。図4からは換水栓口の構造が分かる。まず銅板で栓の入る穴を巻いて釘で船底に打ち込んで留め(銅板巻)、縦・横方向に真鍮の棒(呼称:メド)を複数渡して魚が逃げない工夫をしていた。木栓はこの穴に生間側からはめこんでいた。銅板を用いるようになった時期は不明で、銅板をする前はもっと小さい穴だったのではないかと思われる。木栓は船尾2段デッキ下の一番後方生簀の横か後ろに、木の箱に換水口の数だけきれいに詰めて置いてあった。HN009・HN010には木栓を入れる木箱がマストの前に置かれている。
 

図4 換水栓口 断面略図