活魚運搬船の構造(図6)

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図6 活魚運搬船の構造(大日水産 日野逸夫氏作成)

 船内配置は操舵室の下に機関室を設け、船尾に向って乗組員居住区、賄室(炊事場)、調理台と水槽(真水用)があり、船尾には釣り便所があった。活魚を積む生間は船首に向って大の間(おおま)、小の間(二の間)、三の間、四の間があり、左右の違いは面舵・取舵(二の間の面舵、二の間の取舵など)で区別していた。生間の前は氷艙、船艙となる。氷艙内部は昔は木を貼って直接、氷を入れていたが最近では発泡スチロールで覆われており約3トンの砕氷を積んでいる。魚は泳がしながら活かして運ぶが、輸送中に弱った魚は〆めて、すぐに魚箱に移し氷詰めするためのものであり、大きな漁港には砕氷を販売する製氷会社があった。船艙には碇やロープが積んであった。船首側に重いものを配置することで船全体のバランスをとっていた。
 生船は活魚を運搬するのを目的として作られた船である。その為、生間に如何に多量の海水を入れるかを工夫して設計されている。舳先から生間までの長さを短くすれば(船艙、氷艙を小さくする)生間が広くとれる。しかし新船の間はそれでも良かったが、時間が経ってくると船材の木材が海水を吸い、ぼたってくる(重くなってくる)。すると、舳先の喫水が下がり時化の時に危険となる。そこで、一番目の生間から1~2尺前に新しく戸立を作り、浮力空間を設け喫水を上げていた。これを「チョンの間」と呼んでいた。
 生間数は船の規模が大きくなると最大6間があるものがある。生間を5間にするか6間にするかは船主が決めていた。ハマチを主とする時は一つの生間が大きい方がいいため、船主の意向次第で5間にすることもあった。大間にマダイなどの高級魚を積むのは、時化た時に船尾に近いほど生間内の海水の動揺が少ないからである。父親は「鯛の伊達積み」といって鯛を積んでいるということが看板になっていたと言っていた。魚の種類と数量によって、また、空船であっても時化具合で大間、或いは大間と二の間の栓を抜いて海水を入れ船を安定させた。また冬場は時化が多いため船首部分に波除けの為に「汐切り」を設置していた。これは船首とマストの間に馬木を通し、外板に汐切板をはめ、さらにその上にシートを被せていた。HI113は垂水基地に入港した第八拾壹住吉丸で船首部分に汐切りが設置されている。
 船艙(生間)内部には、荒天時において船体のローリング、ピッチングによって起こる海水の動揺を防ぐために生間中央に設けられた中仕切り板や、舷側内部に固定された棚(ハネ張り)に水バネ板が取り付けられている。水バネ板は、航行中は設置して航行が終わると外していた。はめ込み式の栓で留めていた。航行中設置しているのは、船の揺れで水が横揺れしないようにするためで、これがないと船の横揺れがひどく、魚にも悪影響を与える。