船釘について

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 釘鍛冶は瀬戸内海各地にあった。その中でも芸予諸島大崎上島の木江町沖浦や福山市鞆の浦の釘鍛冶屋が有名で、マキハダや船釘とともに槙皮船によって各地に販売されていた。昭和61年(1986年)には槙皮船「第3代信用丸KS193昭和39年(1964年)進水」は兵庫県明石港まで来ていた。今回、掲載した船釘は岡山県倉敷市玉島在住の加瀬野久志氏が平成12年(2000年)1月4日に広島県尾道市にあった専門問屋の株式会社大和商会から購入したものと、信用丸から購入したものを一部含んでいる。なお、加瀬野久志氏の父である加瀬野工氏は木造機帆船を建造していた船大工であった。船釘の生産が終わるにあたって収集された資料KS213~KS217で今回の資料集で紹介する。
 
皆折釘 KS219
 皆折釘は縫釘の頭の両端を敲いて小さな面を作り出した形態の船釘である。さらに広い面を作り出したものはイチョウ皆折釘KS220と呼ばれる。船の小縁(レール)やデッキの板を留める時などを固定するのに使用する。縫釘より長い頭が押さえる働きをする。釘差しで穴を開けて打ち込む。長さは2寸、3寸、3寸5分、4寸、7寸のものがある。2寸のものは全長64mm、幅7.5mm、厚さ3.6mm、頭部幅8mm、高さ3.3mm、重さ9g、1本40円で購入できた。いずれも亜鉛掛けされている。亜鉛掛けの釘は前からあったが値段も高く、それ以前の釘は鉄だけのものであった。
 包釘KS221はツマミ釘ともいい、一般に2寸程度の皆折釘の小さいものをいう。皆折釘と同じく小縁(レール)、デッキの固定にも使用する。2寸のものは全長64mm、幅5mm、厚さ5mm、頭部幅6.4mm、高さ7.8mm、重さ9gで価格は不明。
 
縫釘 KS218・KS222
 縫釘は頭が僅かに内側に折れた船釘で、先は頭の折れた側に曲げて使う。棚板など何枚かの弁甲材を繋いで縫い合わせ大板にするのに用いる。継ぎ合わされた大板は和船建造で最も重要な焼き曲げ工程を行う。
 長さは3寸、3寸5分、4寸、4寸5分、5寸、5寸5分、6寸、9寸、9寸5分、1尺、1尺5分のものがある。いずれも亜鉛掛けされているが、9寸5分、1尺5分のものは鉄素材の色で黒ヌイと呼ばれている。1尺5分のものKS224で全長333mm、幅29.6mm、厚さ10mm、頭部幅31.5mm、高さ9.5mm、重さ459gで1本400円。3寸のものは全長10mm、幅11.5mm、厚さ4mm、頭部幅13mm、高さ8mm、重さ24g、1本45円で購入できた。いずれの縫釘も長さに比べて薄く軽量に作られている。
 
通釘 KS221
 帽子状の頭の付いた平釘。主に航(敷)と中棚と上棚に角度を付けて、これらを接合するのに通りに打つ。角度を付けて接合するのは棚板構造ならではの接合技術である。使用前に少し先は頭の折れた側に曲げて使う。通釘は他の釘などと形も異なり、大きくなるので値段が高かった。長さは3寸(信用丸)、3寸5分(信用丸)、4寸5分、5寸、5寸5分(信用丸)、7寸、8寸のものがある。いずれも亜鉛掛けされている。8寸のものKS226で全長250mm、幅20mm、厚さ8mm、頭部幅46.8mm、高さ22.3mm、重さ208gで1本600円。3寸のものは全長102mm、幅10.4mm、厚さ3.8mm、頭部幅25mm、高さ3.1mm、重さ23gで価格は不明。4寸5分のもので1本125円で購入できた。
 
ボート(ボルト)
 木ボートKS229・KS230は桧製、大は長さ243mm、頭は28mm×31mmの角形。先は25mmの円形で、ボードキリでボード穴を開けてから外側から金槌で打ち込む。頭部四隅は鑿で斜めに欠き、先端には幅5mmで面取りがされている。重さ71gで価格は不明。木ボートの埋木KS231は桧製で、大で直径37mm、小で31mm、厚さはともに14mmである。厚さ14mmの板材をホールソードリルを使って連続的に作り出している。助骨材と外板、外板と防舷材には金属製の船釘は使わず桧材の木ボルトを使用する。
 鋼鉄製ボードKS228は船の板をつなぐ金具。長さ177mm、220mm、280mm、342mmで、いずれの頭部も直径30mm、高さ9mmボタン状の頭となっている。直径13mmの鉄棒を長さに合わせて裁断している。六角形のナットが付属している。342mmのボルトで重さは386gで価格は不明。
 
タック釘
 タック釘には断面の形が丸い丸タック釘と、断面が方形の角タック釘がある。いずれも頭部はボタン状の頭となっている。丸タック釘KS232・KS234は長さ3分×2寸5分、3分×3寸、3分×3寸5分、4分×4寸、4分×4寸5分、4分×5寸(信用丸)、4分×5寸5分、4分×7寸、直径は3分と4分のものがあり、いずれも鉄棒を長さに合わせて裁断している。先端部を叩いて方形にしているが、その内の二面をクサビ形に加工している。長さの長短にかかわらず頭部直径は3分のもので23mm~25mm、4分のもので29mm~32mm、の規格がある。いずれも亜鉛掛けされている。4分×7寸のものKS233で全長220mm、直径13mm、頭部径30mm、高さ8mm、重さ225g、1本130円。3分×2寸5分で全長80mm、直径10mm、頭部径25mm、高さ7.5mm、重さ54g、45円で購入できた。
 角タック釘KS234は長さ2寸、4寸(信用丸)、4寸5分(信用丸)、4寸以上のものは約10mm×10mmの角棒を長さに合わせて裁断している。先端部に近い二面がクサビ形に加工されている。いずれも亜鉛掛けされているが、2寸のものは素材のままである。4寸5分のものKS235で全長140mm、一辺10mm、頭部径23mm、高さ7mm、重さ114gで価格は不明。2寸で全長66mm、一辺8mm、頭部径21mm、高さ6mm、重さ31gで価格は不明。