田中金物店・田中良夫氏の父・田中庸介さんは、鍛冶屋町商店会の会長を務めた方である。一方、「世界一のかっぱコレクター」として有名。鍛冶屋町のメンバーで結成した「鍛交会」の旅行先で見つけたカッパの口笛を購入したのがきっかけとなり、全国のかっぱを探訪し収集すること数十年、膨大なコレクションはその数6000とも8000とも言われる。材質も、木、石、布、土、紙、象牙、金属、陶器など、形も大は2メートルぐらいのものから、小は米粒ほどのものまで種々雑多。これらの「かっぱ」たちは、庸介さんの死後、明石市立文化博物館に寄贈され、整理分類作業は今も続いている。ところで、「明石にかっぱがいるのだろうか」。このことに関して、民俗学者・柳田國男と庸介さんご本人が書いた興味深い文章を残している。
柳田國男は「明石のカワカムロ」(『柳田国男の故郷七十年』PHP2014年)の中で、『「明石の河童は海にいるんです」何というのか「カムロ、カワカムロ」』という話を紹介している。また、庸介さんは、『続河童放談(3)』(政経税第39号1978年)で、「近年明石岩屋神社の西のギオンさんでガタロウ「河童」のお守りを売っていた。このお守を身につけて海に入ると水難除けになると…。」また、「明石のかっぱは海に生きているといわれており…」さらには「明石公園剛の池周辺に河童がいたという話も聞く」と書いている。
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写真11 河童のコレクション(一部)と鍛交会の旗