2.汐切板

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 昭和34年、昭和35年頃(1959年、1960年)から船首に「汐切板」と呼ばれる波除けを付けるようになった。その構造は船首からマストに馬木を使って角材をかけ、それに幅広の板材を甲板に向けて斜めに複数並べ、その上に防水シートを張ったもので、主に季節風が強い冬場だけ設置していた。時化になると船首が潜水艦のように一度水中に潜り、海水を乗せて浮上すると汐切板によって甲板にかぶる海水を船外横に弾くような排水する機能を持っていた。特に空船の時は船首が上がっているので汐切板によって前方の視界が悪くなるので時化以外の時は取外していた。誰が発明したものかは分らないが時化を乗りきる長年の経験から生まれたと考えられる。エンジン馬力が大きくなって船足が速くなるにつれて波の抵抗を大きく受けるようになり、波をかぶることが多くなってきたことも汐切板を取付けるようになった原因である。活魚は時価のため台風で時化る時などは品薄になるので「何でもいいからあるだけの魚を市場に運んで来い」と社長に言われていた。木造船は新しい間は浮力がありよく浮くが、永年使い続けると船体そのものが水分を含んで船首が特に沈んでくる。「ボタル」と言われる。それを防ぐ為に船首の氷を入れる艙とその隣の生間との間に幅の狭い空間「チョンの間」を新たに造ることもあった。

第八拾壹住吉丸に取付けられた「汐切板」