3.FRPの生船について

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 平成9年(1997年)に泰栄丸(FRP生船)を購入した。山口県下関市豊北町にある西日本FRP造船(現ニシエフ)で造られ、船値は昭和62年(1987年)新造船時で1億2千万円程度だった。平成14年(2002年)に長崎県対馬市に売船され、活魚運搬船から仕様変更したらしいが現存するかは不明。平成9年当時、長崎県南部での活魚運搬船はこの泰栄丸のみだった。FRP船は船体が軽いため動揺や振動があり、木造船に比べると乗り心地はあまり良くないが、メンテナンスは木造船に比べると断然楽であった。
 活間の排水作業も10分の1の時間で完了し、日常のメンテナンスも簡素化した。船速は第八泰栄丸で7.5ノットであったが、FRP船では9ノット、燃料消費は3倍に膨れ上がりました。その理由は、積み荷の量を明石型と同等クラスとした場合、エンジンを小型軽量高回転と減速比率増大させる事で、明石型と同じ程の速さに成る。ここで同じ速力で走ったとしてもエンジン回転数は倍の回転数であり、更にターボチャージャーで加給する事で燃料が約3倍に成る。自動車で例えるなら、燃費が良い1,500ccクラスの営業車と高性能なターボ付き軽自動車で同じ距離を走ると、後者が3倍の量のガソリンを消費するということである。
 積み荷は第八泰栄丸(49t)の1.3倍積載可能になり、4kgのハマチ換算だと冬期10,000kgから13,000kg、夏4.500kgから6,000kg積載可能となった。荷役時間は、FRP船の活間は木造船と違い艙内に凹凸が無く、魚を掬い易かったため、半分程度に時間短縮した。活間は4艙8区画で、使用区画は3艙6区画であった。明石型生船も同だが、船首側の1艙2区画は、積み込み過ぎによるオーバードラフトを避けるため、実際は使用しない空間になっていた。
 オーバードラフトとは満載喫水線(船体中央にある乾舷マーク。漁船では横線にVと表記。)を、超えている状態。満載喫水線を超えて運航した場合、法的罰則を科せられる。満載喫水線は設計計算上の安全運航出来る船体性能を確保したリミット域なので、超えて運航する事は法的に出来ない他、明石型特有の船首形状で有るが故に風波と潮流波が重なる海域の荒天航海では、デッキ上へ大量の海水を乗せる事でトップヘビーによる横転を誘発する事が有る(乾舷超え)。海水は船体内部に張り巡らせたロープで真鍮製の円盤状のスカッパをスライドして開閉し、水位を下げる専用のクラップで増し締めして止水していた。