はじめに

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明石市 市民生活局 文化・スポーツ室
歴史文化財係 吉本由梨香

 瀬戸内海に面している明石は、古くから港が築かれ、船の行き来が多いところである。古代には潮待ちの港としての役割を持ち、近世から近代にかけては明石の特産である酒や瓦、焼物などを神戸や大阪などの都市に運搬するための港として利用されてきた。また、複雑な潮の流れや地形により、浅瀬に住むイカナゴやそれを餌とする回遊漁であるタイやサワラ、さらにタコやアナゴ、ヒラメなどの底モノと多種多様の魚を獲ることができる豊かな海を有する明石では、漁業も盛んに行われている。より多くの魚を得るためには、漁場や漁法に応じた船を必要とした。このような運搬や漁に使用される船を建造し、修理をする船大工たちも、各港の付近に住んでいた。
 今回紹介する資料は、その船を造る船大工たちの仕事に使用された道具類一式である。これら船大工道具は、船の建造技術を伝える資料として、また海に面した明石の文化の一端を担う資料として重要なものである。