一二〇五年に編まれた『新古今和歌集』には次のような歌があります。
あふ人に問へど変わらぬ同じ名の
幾日になりぬ武蔵野の原
後鳥羽院下野
この歌は、武蔵野を旅して、その広大さを体験した後鳥羽院の女房の歌です。会う人に、「ここはどこですか」とたずねると、何日たっても、「武蔵野ですよ」という答えがかえってきたというのです。「武蔵野の原はなんと広いことよ」とうたったものです。
当時、武蔵野は、関東平野の大半を占める大平原でした。台地は水利が悪く、長い間、人がほとんど住まない荒地でした。そんな、広大な武蔵野の景観がよく分かる歌です。