一 アキシマクジラの化石

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 昭島市の歴史を語るうえで、最初にふれなくてはならないものに、アキシマクジラがあります。なにしろ、この昭島に、まだ人々が暮らしていなかったと考えられる時代に、鯨が住んでいたのです。それを証拠だてるものとして、鯨の祖先のほぼ完全な骨の化石が、この昭島から発見されているのです。
 アキシマクジラは、昭和三十六(一九六一)年八月二十日、市立玉川小学校の田島政人先生によって発見されました。
 発見された場所は、大神町の、「八高線鉄橋」近くの(巻末資料地図参照)多摩川の川底です。
 発見されたころ、この付近は、多摩川の砂利を採取していたため、古い地層が露呈していました。田島先生は、そういう場所で、十メートルの範囲に、直径二十センチメートルぐらいの動物化石が、散在しているのを見つけたのです。
 早速、八月二十九日から、地もとの研究家の協力を得て、発掘調査が行われました。発掘した化石は、国立科学博物館の尾崎博士に鑑定をお願いしました。その結果、体長十六メートル余りの、およそ百数十万年前の、(発見当時は五百万年前と推定)鯨の化石であることがわかりました。
 その後、国立科学博物館の本多技師の指導で、復元が行われました。約一年後の、昭和三十七年八月二十三日に完成しました。
 昭和三十八年、日本古生物学会総会で、鯨類研究所の西脇博士によって「細かく調べてみると、現在の鯨のどれとも違っている」として「アキシマクジラ」と命名されました。
 このことから、第四紀に属する更新世前期には、昭島一帯は、鯨の住む海の底であったことがわかりました。

アキシマクジラの発掘風景


東京付近の地質年代表