紅林らの計画について、経由官庁である東京府が鉄道省に調書を出しています(大正8年12月11日付。鉄道省文書=鉄道博物館所蔵。以下同じ)。その内容は石灰石の採掘、木材や木炭の搬出に便利である、別会社による競願はない、鉄道は成功の見込みがあるという、五日市鉄道に好意的な調書です。
しかし、五日市鉄道の敷設には東京府ではなく鉄道省の免許が必要です。紅林らの敷設申請に対する鉄道省の対応はどうだったのでしょうか。鉄道省の担当者は現地視察を行った上で、次の見解を報告しています(大正9年2月21日付「復命書」。鉄道省文書)。
その復命書は、五日市鉄道は「地方開発上有益」で「開業ノ上ハ相当ノ収益ヲ挙ケ得ル」と書いています。一方、「起点ノ選定ニ就キテハ相当変更ノ要アルヘシ」とし、理由として、①(一回目の申請である)二つの砂利専用線を経由して立川に乗入れるのは不可能、②(二回目の申請)立川駅に直接接続する路線は地形上困難とする一方、青梅鉄道の輸送力は五日市方面からの貨物・旅客を輸送できる余裕があると報告しています。
このように、鉄道省の結論は、鉄道敷設は認めるものの、起点は「青梅鉄道拝島駅ニ連絡セシムルヲ妥当ト認ム」とするものでした。