多摩川砂利木材株式会社専務取締役坂本順(以下単ニ甲ト称ス)ニ於テ経営スル専用鉄道軌条敷延シ工事ヲ青梅鉄道株式会社取締役社長富永謙治(以下単ニ乙ト称ス)ニ委託施行スルニ付左記条項ヲ契約ス
条 項
第一条 軌条敷延シ工事ハ東京府北多摩郡福島村地内起点ヨリ同郡田中村地内終点ニ至ル総延長壱哩六拾壱鎖間ニシテ別紙工事示方書並ニ図面ニ依リ施行スルモノトス
第二条 前項ノ工事費金四千四百参拾四円七拾銭(別紙工費内訳書記載ノ通リ)ハ本契約締結ト同時ニ甲ヨリ乙ニ支払フモノトス
第三条 乙ハ本契約締結ノ日ヨリ十四日以内ニ現場ニ着手シ着手ノ日ヨリ三十日以内ニ完成ヲ告クルモノトス
但期間中不可抗力ニ原因スルカ若クハ雨天ノ場合ノ延期ハ甲ニ於テ承認スルモノトス
第四条 甲ハ軌条並付属品枕木砂利其他軌条敷設ニ要スル諸材料一切ヲ左記場所ニ於テ乙ニ供給スルモノトス
記
一 軌条及枕木(一哩六十一鎖分)零哩十鎖附近 線路側
二 砂利 五〇立坪 同 上
一五〇立坪 零哩十一鎖 同上
一五〇立坪 零哩参拾五鎖 同上
第五条 甲ハ乙ニ対シ工事施行期間中「トロリー」三基(台及箱付ノモノ)及工夫宿泊ニ要スル家屋(約八坪内外)ヲ無料貸与スルモノトス
第六条 甲ハ工事着手前線路用地及工事施行上要スル使用土地ノ範囲ヲ定メ乙ニ引継クモノトス
前項ノ場合施工基面上ニ存在スル地上物件及雑草木一切ハ線路外ニ除却スルモノトス
第七条 本工事ニ要スル人夫ニシテ乙ノ要求アル場合ハ甲ニ於テ供給ヲナスヘキモノトス 此場合乙ハ人夫賃一人ニ付金弐円ノ割合ニテ甲ニ支払フモノトス
第八条 施工基面沈下等若クハ監査ノ結果延長一鎖ニ付二立坪五合以上ノ砂利ヲ要スル場合ニ於テハ甲ハ其超過部分ニ対シ一立坪金四円五拾銭ノ割合ヲ以テ運搬撒布費ヲ乙ニ支払フモノトス
但前項ノ場合ニ於ケル所要砂利ハ甲ノ負担トス
第九条 線路ノ竣成勾配ハ設計勾配ニ比シ多少差違ヲ生スルコトアルモ運転上支障ナキ限リ何等異議ヲ陳ヘサルモノトス
第十条 乙ハ工事竣功ノ上甲ニ引継ヲ了シタル後ト雖モ監督官庁ノ監査ノ結果合格セサルモノアルトキハ乙ニ於テ施行シタル不合格ノ点ヲ限度トシ無償修理スルモノトス
但使用開始後ハ此限リニアラス
第十一条 甲ヨリ乙ニ提供スヘキ軌条付属品ノ不具合又ハ材料供給不能等ニ起因シ工事ヲ進捗セシムルコト能ハサル場合ハ甲ハ相当費用ヲ乙ニ弁償スルモノトス
但前項費用ハ甲乙協議ノ上決定ス
第十二条 甲ノ都合ニ依リ本契約ヲ解除スルカ若クハ工事中途ニシテ廃止スル場合ハ第二条ノ工事費ハ乙ノ所得トナスモノトス
右契約ヲ証スルタメ本書弐通ヲ作リ各自壱通ヲ所持スルモノナリ
大正十一年十月 日
多摩川砂利木材((ママ))株式会社
専務取締役 坂 本 順
青梅鉄道株式会社
取締役社長 富 永 謙 治
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工 事 方 法 書
第一条 線路ハ北多摩郡福島村地内零哩ヨリ同郡田中村地内壱哩六十一鎖ニシテ途中何等分岐線ヲ有セサルモノトス
第二条 軌条ハ一「ヤード」五十封度軌条ヲ用ヒ軌間ハ三呎六吋トス
第三条 枕木ノ配置ハ三十呎軌条一本ニ対シ十三挺トス
但シ穿吼ヲナサズ直接犬釘ヲ打込ムモノトス
第四条 砂利ハ一哩ニ付二〇〇立坪ノ割合ヲ以テ撒布ス
第五条 軌条敷延工事竣成期限ハ着手ノ日ヨリ向フ三十日間トス
但シ雨天順延タルヘキコト
第六条 軌条敷延、枕木挿入、砂利撒布、床搗キ固メノ諸工事終了ヲ以テ竣工トス而シテ工事竣工ノ場合ハ同時ニ該工事ノ受授ヲ完了シタルモノト認ムルコト
第七条 踏切道張板工事曲線ニ於ケル「ウツドストラツト」取付工事及ヒ車止メ諸標標建植工事等ハ本工事ニ包含セサルコト
以 上