昭和四十九年、市制施行二十周年記念事業の一環として、市民の郷土に対する知識と理解を深め、市勢の発展に資するため、市史編さん事業が企画され、爾来、五年余の歳月を経て茲に発刊の運びとなりましたことは誠にご同慶に堪えません。
不肖、市史編さん委員長として今日まで微力を尽くしてまいりましたが、この佳き日を迎え感慨無量のものがあります。これ偏えに、市史編さん委員、調査員、そして専門員諸賢の不断のご尽力の賜と深甚なる感謝と敬意を表する次第であります。
幸い専門的な調査執筆につきましては、早稲田大学教授水野祐先生にご担当いただき、更らに水野研究室等に所属する先生方のご協力を仰いだところであります。
又、民俗調査、古文書等史料の提供に卒先ご協力を賜わった市民各位に衷心より厚く御礼申し上げます。
尚、諸調査及び史料の蒐集過程で、今更らの如く貴重な史料の散逸を知り、作業は困難を極めたことをお伝えいたします。今後も急速な社会の進展に伴ない、史料の蒐集は益々難かしくなることが推測されます。
この時にあたり、市史の発刊を見ますことは極めて意義深いものがあります。
私達の郷土昭島は、曾て昭和初期全国屈指の養蚕村として発展したのであります。しかし、桑畑に象徴された市域も、戦後、急激な人口増と共に都市化は進み、今や首都圏のベッドタウンとして大きく変貌を遂げつつあります。
遠く縄文、弥生にさかのぼり連綿と昭島市の歴史は続いております。現代に生きる私達は、先人の歩んだ道を正しく知ることにより、その遺されたかけがえのない貴重な文化財の保護に努め、更らに後世に伝承する責務があると痛感するものであります。
かかる観点から、本市史が郷土を知る手がかりとして市民各位に十分活用され、さらに昭島市の発展に資することを只管祈念し、甚だ蕪辞ながら一言もって市史編さん委員会を代表しご挨拶といたします。
昭和五十三年十一月
昭島市史編さん委員会
委員長 松本金次郎