二 衛星都市群の中の昭島市

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 立川市以西の衛星都市群は、青梅市のように、古くから機業都市としての機能を有していた所は別として、其他の都市はいずれも農村的性格をもっていた村が、首都圏整備によって、その空閑地を住宅都市や、産業都市や、あるいは学園都市への転換をめざして、都市計画が進められているのである。それにもかかわらず、ベッド・タウンとして、現在まで余り急速な発展を示さなかったのは、基本的には、都心から遠距離であり、通勤所要時間が一時間を超えるためである。この条件を克服するためには通勤交通機関の高速化にたよる以外にはない。これは立川以遠の衛星都市群に共通する課題である。
 首都圏をも含めて、関東地方の交通網をみると、すべて都心を中心として、各方面への放射状路線のみが発達し、それらの相互を結びつけるクロス路線が未発達であるための不便さが目立つ。各衛星都市群から、他の近接都市へ通ずるためには、一端都心に出て、乗換えて目的地に達するというV字コースをとらなければならない。戦後の自動車の発達と、道路網の整備によって、自家用車やバス網の利用で一時は鉄道の不便さを克服したかに見えたが、自動車の異常な発達が却って道路上の交通渋滞をひきおこし、不便な鉄道の方が時間的には、むしろ早いという矛盾をひきおこしている。関東地方の交通網の動脈の鍵を、独占的に掌握している国鉄が、古い中央中心主義的な志向をすてて、首都圏整備の新しい時代に眼を開いて、ローカル支線の拡充・整備に主力を注ぎ、青梅線・五日市線の複線化を完遂させ、八高線の複線化と電化とを実現させ、快速電車の運転や、運行本数の増加によって、通勤時間を短縮できれば、この地域の住宅都市はより一層の発展を約束されるであろう。
 八高線は関東地方西部を縦貫する稀少価値のある主要な支線であり、この支線が整備されることによって、関東西部の開発が促進されるであろう。そしてこの八高線が拝島駅において、青梅線とクロスし、五日市線や、西武拝島線と接続していることは、拝島がターミナル都市として、将来、発達する可能性をもち、交通上の要地であることを示している。
 江戸時代に昭島市域の中心であった拝島は、日光街道と奥多摩街道のクロスする地点であり、青梅や五日市、あるいは八王子との交流の玄関口であった。古くは多摩川の流れを越して八王子と通ずるための渡船があり、近年そこにまず拝島橋が架けられ、八王子市との交通の便がはかられたが、更にその下流に、築地町から八王子市小宮町に通ずる多摩大橋が完成して、この方面での交通が緩和された。八高線の改善は両市の接触をより密接にし、八王子駅において接続している横浜線と結んで、横浜に通ずる近道にもなる。昭島市の発展のためには、どうしても八高線のすべての点においての改善策がのぞまれる。