関東盆地南部では、深海から浅海、浅海からデルタへと堆積が進行しつつ盆地の中心は北部へ移動するという地殻運動による不整合が、洪積世中期の間に継続してみられ、海成層が堆積していった。この現象は三浦半島の北部に分布をみる長沼層で確認され、この長沼不整合は地殻運動の部分的上昇と、堆積盆地の移動という形で行なわれたものと考えられている。長沼層はシルト質砂、砂質シルトから形成され、温暖な海流による動植物化石の間に、寒流系の浮游性有孔虫群化石がみられるが、全体としては温暖な時期の暖流系堆積層であると考えられている。長沼層の上にのっていて更に広く分布する屏風ケ浦層は、礫・砂・シルトから成るが、下部は温暖期の堆積で、上部に向って寒冷な気候下での堆積であることを、その包含化石によって推定できるが、その最上部に連続して堆積しているのが多摩ローム層である。多摩ローム層は、屏風ケ浦層を堆積した海が退き、陸地化した後もなお陸上に降下した火山灰が堆積したもので、その起因火山は、古箱根火山・古八ケ岳・伊豆半島の古火山であった。包含される植物化石は、トウヒ・カラマツなどの寒冷気候を示すものを主体としているので、長沼層-屏風ケ浦層-多摩ローム層という連続的な堆積の時期に、気候が温暖期から寒冷期へと移行したことが明らかになる。多摩丘陵東部の屏風ケ浦層の波蝕台は温暖期の海面上昇を示すが、多摩ローム層が堆積しはじめた頃から海退現象がおこり、この地層は多摩丘陵のような、関東盆地周縁部に、屏風ケ浦海進のあとをとどめつつ広く分布するのである。したがって多摩面は現在みる段丘群の中で、最も高位置を占める、高位段丘面である。