武蔵国は古くから馬の産地である。馬の飼育場を「牧」-「マキ」というが、「マキ」は「馬城(マキ)」である。そして「城(キ)」はまた「サシ」というから、「馬城」が「牧」となると同様に、「馬城」から「マサシ」と転音し、この「マサシ」が更にムサシと転訛したのである。だから武蔵の語源は「馬城」すなわち牧場の義だとする説である。武蔵国に牧の設置が制度化されるのはずっと後の律令時代のことであるから、「ムサシ」という語は、牧場が制度化されるよりも遙かに古くから存在しているので、この説には時間的矛盾があるため、賛成できない。