三 前期旧石器

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 旧石器時代の時期区分は、もちろんヨーロッパの旧石器時代に範を置くものであるが、日本列島の旧石器時代は従来先土器時代や前繩文時代と呼ばれていたように、旧石器としての認識は最近のことで、時期区分にも明瞭を欠く。敲打器文化・刃器文化・尖頭器文化・細石器文化の五区分や前期・後期・晩期の三区分などがあり、混乱しかねないので、ここでは単純に前・後の二つに分けた。すなわち、下末吉・武蔵野ロームから出土する石器群(前期旧石器)と立川ロームから出土する石器群(後期旧石器)である。五時期文化区分の敲打器は前期、刃器・尖頭器・細石器は後期、また三期区分の場合の前期は前期、後・晩期を後期とする。
 前期旧石器の種類として、河原石先端加工の礫器、チョッパーとよばれる片刃の粗製石器、チッピングトゥールとよばれる両刃の粗製石器、剥片尖頭器などで、岩宿ゼロ文化層や栃木県星野遺跡の最下層、大分県早水台遺跡の第五・第六層から出土した石器群である。これらの石器は最も原始的なものであり、この石器をもって細い作業はできないといわれている。今日からは一〇万年前以上と考えられる。
 礫器は人類の用いた最古の石器で、ハンドアックス(握槌)もまた最古の石器に属するが、西洋梨形のハンドアックスは早水台遺跡や群馬県権現山遺跡などから発見されている。礫器には人工か自然かという問題があり、ヨーロッパの前期旧石器時代に当る時期が日本列島に存在したかどうか議論が多く、学問的にはまだ決着をみていない。