一 関東の旧石器

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 旧石器時代の研究は関東地方で始まり、全国に及んでいった。そのためでもあろうが旧石器時代の遺跡は関東・中部地方に濃密に分布している。
 前期旧石器を出土した代表的な遺跡は群馬県岩宿遺跡、栃木県星野遺跡、栃木県大久保遺跡、群馬県権現山遺跡などで、関東平野の周辺部に分布している。千葉県は旧石器時代遺跡のかなり発見されている地域であるが、立川ローム最下部に位置した成田空港No.五五遺跡が最古に属し、前期旧石器にさかのぼる遺跡はなく、茨城県では北西部に前期旧石器が発見され、このような状況は下末吉ローム期の海進で生じた古東京湾の周辺と一致し、前期旧石器人の活躍と古東京湾との関係が考えられている。
 後期旧石器に入ると、遺跡は関東平野一円に発見され、人々の活躍が目立つ。東京都・神奈川県・群馬県に遺跡の分布は濃密であるが、旧石器は地下深く埋没しているため、調査の度合いによるところが多い。群馬県岩宿遺跡、栃木県向山遺跡、茨城県後野遺跡、千葉県木苅峠遺跡、埼玉県砂川遺跡、東京都茂呂遺跡、神奈川県月見野遺跡などは各県の代表的後期旧石器の遺跡である。これらの遺跡は川や水のある場所に近く、海岸線は今日のものと大きな違いはあろうが、地形は変らなかったと思われる。繩文時代遺跡のある地城にはしばしば後期旧石器が発見されることもそれを意味していよう。