ムサシは、平和な城を意味するアイヌ語「ムン・チャシ」に由来するという説。アイヌの城砦はその三方が断崖をもって河流または低地に接し、一方は山丘をもって奥地に連らなり、河流の合流点や、沼沢に突きだした丘陵端などのきわめてけわしい地であるが、武蔵国内のどこをアイヌがそう名づけたのか明らかでないので、説明として不充分ではある。また、「チャシ」というアイヌ語は日本語では「館(たて)」にあたり、関東から奥羽にかけて「何々館」という地名が多く分布しているが、これは皆アイヌ語の「チャシ」だと説く。
一 アイヌ語「ムン・チャシ」説