B 多摩の在村的「読本」作家不老軒うたゝ

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 多摩郡の在村的読本作家、それは郷地村の「不老軒うたた」宮崎伊八であった。「武野 不老軒 転(うたた)」と署名して残した作品は、職業的作家ではないから生涯に一作だけ、『月廼野露草双紙』全六巻二〇回の話につづったものである。その表紙と目次を紹介してみよう。(目次、三田村鳶魚校訂『未刊随筆百種』所収本による。)
 
   露草雙紙目録(つゆくさそうしもくろく)
      巻之一
    第一回  穂村十市良(ほむらといちらう)助(たすけて)狐(きつねを)醸(かもす)禍災(わざわひを)
    第二回  竪野広之進妻(たてのひろのしんのつま)螫(さゝれて)〓(くちばみに)得(う)幸福(さいはひを)
    第三回  千草助(ちくさのすけ)浮(うかべて)舟(ふねを)玉川(たまがはに)綰(わがぬ)赤縄(せきしやうを)
      巻之二
    第四回  小露詣(こつゆまうでゝ)岩殿観世音(いはどのくわんぜおんに)逢(あふ)危難(きなんに)
    第五回  〓山次右衛門(さやまじゑもん)勉(つとめて)蹇(くじく)妖術(えうじゆつを)
    第六回  横路慳九郎(よこぢけんくらう)諾(だくして)異人(いじんに)討(うつ)故朋(こほう)
    第七回  慳九郎(けんくらう)侵(をかして)高尾山(たかをざんを)蒙(かうぶる)神罰(しんばつを)
      巻之三
    第八回  小露(こつゆ)期(ごして)標梅(へうばいを)後(おくる)父母(ふぼに)
    第九回  闇八(やみはち)根(もとづきて)戯言(けげんに)設(まうく)奸計(かんけいを)
    第十回  千草助(ちくさのすけ)失(うひなひて)宝釼(ほうけんを)埋(うずめられる)山中(さんちゆうに)
      巻之四
    第十一回  岨根(そばね)為(して)計(はからんと)継子(まゝこを)自(みづから)陥(をちいる)不義(ふぎに)
    第十二回  国子(くにこ)勤(つとめて)孝(かうを)求(もとむ)不儀悪名(ふぎのをめいを)
    第十三回  慳九郎(けんくらう)殺(ころして)重太(ぢうたを)己(おのれが)為(す)身替(みにかへんと)
      巻之五
    第十四回  〓山次右衛門(さやまじえもん)噛(くひ)殺(ころす)大蛇(だいじやを)
    第十五回  八王子三田良(はちわうじさんたらう)懲(こらす)煎経(ひはぎを)
    第十六回  三田良(さんたらう)悟(さとつて)雲気(うんきを)穿(うがつ)大山(たいさんを)
    第十七回  白闇迯水(しらくらにげみづ)競(くらべて)妖術(えうじゆつを)定(さだむ)君臣(くんしんを)
      巻之六
    第十八回  真国禅師(しんこくせんじ)授(さづけて)戒(くわいを)邪霊済度(じやれいをさいどす)
    第十九回  迯水(にげみづ)報(むくひて)恩(をんを)導(みちびきす)復讐(ふくしうを)
    第二十回  孝子(かうし)討(うつて)敵(あだを)再応(ふたゝび)興(おこす)家(いへを)
     大尾

『露草双紙』稿本(郷地村 宮崎直次郎家所蔵。市指定文化財14号。)