一 軍需産業の発展

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 昭和恐慌前後から、わが国では軍国主義的風潮が強くなってきた。社会主義や政党政治の排斥を主張する軍部や右翼の台頭が目だつようになった。彼らは恐慌による不況のなかで、中国大陸への侵略により、経済の行き詰りを打開しようとする計画を推進した。
 昭和六(一九三一)年九月の満州事変は、そうした侵略計画の現われであり、それは日中戦争から太平洋戦争まで続く一五年にわたる大戦争の第一歩となった。こうしたなかで軍部を中心とするファシズム勢力は、政治経済の組織を戦争遂行の方向に大きくおし進め、非常時体制を強化して、軍国主義の道を踏み固めていった。
 侵略政策を推進するファシズムや軍国主義の台頭は、年とともに軍備の拡充を強化することになった。満州事変以後、財政支出の増大をきっかけにして景気はやや回復するが、その中心となったのは軍需産業である。昭和一二(一九三七)年七月の日中戦争の開始は、軍需産業の発展に一層の拍車をかけた。同年九月政府は「軍事工業動員法」を発動して、軍需物資増産のピッチを高め、軍需産業は急激な発展をとげることとなった。なかでも航空機産業は、もともと軍部主導のもとに発展してきただけに、新しい戦争方式として航空機が重視されると、大発展をとげた。