四 基地問題と昭島市の将来

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 立川基地の返還が実現した今日、昭島市の生活環境をいちじるしく低下させ、その都市開発をはばんでいるのは、横田基地から生ずる種々の公害であろう。そのなかでも市民への影響がもっとも大きく、しかも広いのは航空機による騒音である。昭和四二(一九六七)年横田基地の航空機進入路の直下に居住していた堀向地区の住民たちはジェット機の騒音の激しさと危険に耐えかねて集団移転を余儀なくさせられた。航空機の飛来によるテレビ視聴困難のため、テレビ受信料半額免除地区は、市全体の六割にあたる一万六三〇〇世帯が対象となっているのである。その地区は市域の大部におよび、また電話の聴取困難地区でもある。こうして市民たちは毎日飛びかう飛行機の下で騒音に悩まされ、事故の不安と危険とにさらされているのである。
 また、騒音による教育効果の低下を防ぐ鉄筋防音校舎の維持管理費は、市財政の負担を重くしている。
 このように基地公害は昭島に大きくのしかかっている。だが、航空機の飛行回数は一時期に比べ大きく減少している。たしかに、飛行回数が減ったとはいえ、航空機の大型化により騒音の市民に与える影響は依然として大きい。しかし、回数は現実に減少している。そうして、その背後には、昭和四七(一九七二)年のミドルマーカー(中間電波誘導信号所)設置の反対運動にみられるような市民の力が無言のうちに働いているのだ。こうした反対運動に示された市民の力は、立川基地返還が根強い住民の反対運動で実現されたように、昭島の都市開発をはばむ横田基地の公害をおしつぶし、市民自らの手で、確実に昭島の将来を開発してゆくことになろう。

基地公害


航空機騒音による集団移転前(上),移転後(下)(拝島町掘向地区)