四 オキアミとヨアミ

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 オキアミ(置き網)とは、極めて目の細かいカスミ網を、夜間川の中央に張っておき、石を投げ入れたり、長い竹棹で水面を叩いて鮎を脅して網にかけて獲る漁法のことである。
 ヨアミ(夜網)は、夜間行う投網漁のことである。投網は数ある網漁法の中でも最も一般的に行われたものであり、大正~昭和初めの頃は、六月一日のアイの解禁日には、大勢の村人が、前夜から川岸に集まり、解禁を告げる府中の打ち上げ花火を合図に一斉に網打ちをしたということである。この解禁の前夜には、府中から警察が出張して来て、監視の目を光らせ合図前に網を打つ者を捕えたということである。これとは反対に、遡上鮎がそろそろ市域の流域に達する頃である五月初めには、府中のお祭り(五月五日)があり、土地の警察も府中へ応援に行って不在になるので、その日は禁漁期にも拘わらず投網を打つ者が、川に多く集まったという。
 投網は、各自が冬の農閑期に手製したものであった。網を編むことを「キヨル」と称する。網の錘(「ヤー」という)も手製で、それを造る機械を買ってきて、鉛をとかして製作したということである。錘は丸いものもあれば、細長いものもあり様々であった。網の大きさは、自分の背丈など体型にあわせて調節して作り、網の目の大きさも用途にあわせてさまざまに作った。網の材質は絹糸であった。養蚕が盛んであった市域では、出荷できない玉まゆや屑まゆから糸をとり、それを村の撚り屋にもって行き、投網用の絹糸に撚ってもらい、それを材料として製作したものであった。

多摩川での投網漁