一〇 その他の雑漁法

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 以上の諸漁法の他、ウナギ・ナマズ・ギバチ等を対象とした「流シ針(ナガシバリ)」とか、ウナギの「穴釣(アナヅ)り」、夜間行う〓による突刺漁である「火振(ヒブ)り」などの雑漁法が知られている。
 流シ針とは、ミミズを餌としてつけた数本の針を、一本の綱に結びつけ、その綱の両端をそれぞれ石に結びつけた仕掛けを、夕方川に定置しておき、翌朝それを引き上げるもので、言わば一種の延繩のようなものである。
 ウナギの穴釣りは、木綿針を竹の先端につけて、それにミミズを餌としてつけ、岸辺近くの蛇篭の隙間にさし込む。ウナギがそれに食いついたとき、竹竿を引くと木綿針が横向きになるので取れなくなり、容易にウナギを捕獲できる仕組みになっている。
 火振りは、夜間照明をつけて浅瀬を歩き、瀬にいる魚族を〓で突剌して捕獲する漁法で、松明の代りに昭和初期には、ドビンに石油を入れ、口にボロ切れをさし込み、それに火をつけ明りにしたと言うことである。
 以上昭島を流れる多摩川において、昭和初期頃まで展開されていた諸種の伝統的漁法を眺めてきた。近年多摩川の汚濁により、かつての清流の姿は失われ、それと共にこうした伝統的な各種の漁法も漸次姿を消して行かざるを得なくなったことは誠に残念なことと言えよう。