祭礼のはれ着姿(中島繁治氏提供)
明治初期以来、文明開化の風潮は日本人の衣生活にも大きな変革をもたらし、きものから洋服へと変貌させたが、さらに、第二次世界大戦を契機として、化繊の発明などにより衣服の素材が急激に発達し、人々は新しい衣料の時代を迎えるようになった。綿・毛・麻などの繊維にのみ依存していた時代とは異り、現代では多くの人々が生活の合理化と相まって、衣服の目的や機能に応じた衣料を選択するようになり、また、流行を巧みに捉え各自の好みにあわせた衣服を着用している。このように、ここ一世紀の間に人々の衣生活は大きな変遷をみせている。
市内在住の古老の話によれば、半世紀以前の市内では、女性は夏でも厚手の木綿がすりの着物にきちんと帯をしめこみ、たすきがけで農作業や家事に従事し、また、絹・木綿などを素材として、糸をつむぎ、機で織りあげ、地味な色に染めるなど、衣服に仕立てあげるまでの全てが家庭の女性の仕事であり、現代風に言えば「手づくりの着物」を着用していたそうである。
本節では市内在住の古老の方々より採集した生活経験を通しての話を素材にして、明治、大正期の人々の衣生活についてまとめてみた。