各家での伝承に差異はあるが、「着物や履き物はお葬式の時に新しいものをおろすと良い」という家もあれば、「お葬式には新しいものをおろすといけない。新しいものはおめでたい時におろすと良い」という家もある。お葬式におろすと良いということは、恐らく永生きした人の葬式は縁起が良いということからであろうと古老は語っていた。
着物を裁つのに巳の日が身につくから良いというが、反面、裁ちものは身をきるから巳の日はいけないという伝承がある。是否両面の言い伝えであるが、どちらが正しいのかは別として各家庭では遵守していたようである。また、羽がいっぱいあるので着物が沢山できるということから、裁ちものや仕立物は酉の日が良いとされていた。
なお、二月と一二月の八日は針神様の日でその日は裁縫が禁じられていた。また、死者には折り目のない着物を着用させていたので、仕立上りや洗濯後の着物は一度きちんとたたんでから着用するのが一般的であった。